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商標の観点から中国スマホゲームの海外展開と流行を予測する

去年の冬頃、中国人ゲームファンを通して中国のスマホゲームについて理解を深める記事を投稿しました。グーグルアナリティクスを見ると、今まで執筆した記事のなかでも特に関心を抱いてもらっているみたいです。

www.acgn-globalbiz.com

 

今回は少し視点を変えて、商標という切り口で中国のスマホゲームを見ていきます。少し応用的な内容かもしれません。

 

1.導入


商標といえば時代時代の世相、企業の信用、企業の今後の事業展開を写す鏡。
商標登録出願や登録商標の状況を調べることによって、その商標に係る事業の本気度や将来の商品・サービス展開を一定程度推し量ることができます。

これはアニメ・ゲーム分野でも同様のことが言えます。
放送または配信前に商標を出願していれば、当然その商標を使って商品・サービス展開する意図が読み取れますし、出願数、出願国、商標のバラエティが多ければそれだけ多岐に渡る展開を広範囲に行なう意図が読み取れます。
商標権というのは物権的権利であり、商標権者はその商標を独占的に使うことができ、同時に、もし権原なき第三者が使用していれば商標権に基づき差し止め等を行なうことができます。独占と排他は表裏一体な関係なわけです。

つまり、誰にも真似されることなく商標を用いて独占的に利益をあげたいと思うほど商標権の獲得が動機付けられます。そして、その商標を長年に渡って使用していくことで、商標にユーザーないし消費者の信用が蓄積されていくという仕組みです。
また、多くの国・地域において、出願から一定期間経過後に商標が公開される制度が設けられており、企業の出願を比較的早期に調べることができます。

 

本記事は、そうした商標制度、商標権の効力、企業の商標戦略を踏まえた上で応用し、私が注目している中国のスマホゲームを題材に、どれだけ本気で売ろうとしているのか、どれだけ先を見越してマルチ展開、日本を含む海外への展開を図ろうとしているか迫ろうという試みです。

この試みはコストアプローチの一種とも位置付けることができますが、便宜上トレードマークアプローチと呼ぶことにします。

 

2.注目している中国のスマホゲーム

 

2.1 『造物法则』(日本語タイトル:アビストライブ)
開発=广州天梯网络科技(百奥家庭互动グループ)

こちらのスマホゲームはマンガがスマホゲーム化されたものです。全キャラのCVが日本語らしいです。主な声優として喜多村英梨さん。
超余談ですが、キタエリは中国で「酋長」「血蹄」という愛称があります。由来を説明すると、彼女が演じてきたキャラはNTRタイプが多く、NTRは中国語では「牛头人(日本語で言うとオーク)」のピンインの頭文字を取ったものです。そして、オークというと『魔兽世界(World of Warcraft)』というゲームに出てくるオークキャラを中国人オタクは想起させ、そこから「英梨酋長」とか「英梨血蹄」等と呼ばれるようになりました。説明が難しい・・・

 
(出典:http://m.139y.com/gl/84389.html

売れるオーラがします(小並感)

www.9game.cn


ここから本題のトレードマークアプローチ。まず、中国で調べてみると

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 出願件数は合計で29件あります。また、商品・役務も幅広く指定していることから、様々な展開を想定していることが汲み取れます。
ここで、更に海外でも出願していたら本気度が分かるところですので、台湾を調べてみます。すると、

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台湾でも現地ディストリビューターを通じて出願していることが分かります。ここから、『造物法则』は海外展開も図っていることが推定できます。

トレードマークアプローチは大体このような感じで、出願件数、指定商品・役務の幅、出願国の多寡に基づき、注目しているゲームが「どれくらいの本気度で手掛けられているのか」を見ていくものです。ひいては、「次はこのゲームがくるのではないか」といった、流行予測を自信をもって周囲に開陳することができます(笑)

 

ただし、トレードマークアプローチには弱点がいくつかあります。それは

(1)外国語をある程度読み書きする能力が要求されること

(2)各国官公庁の商標データベースの使用方法を心得る必要があること

(3)国によっては出願された商標が中々公開されないこと(中国だと出願から公開までに4〜5ヶ月掛かります、そもそも出願公開制度が規定されていない国ですが)

です。


この『造物法则』に関していえばトレードマークアプローチは実は茶番で、最初から答えがあります。
つまり、日本でのリリースが今年の6月下旬時点で既に決まっているのです。

ir.vector.co.jp

 

2.2 『神无月』(日本語タイトル:神無月)
(開発=盛大游戏)
こちらのスマホゲームは、盛大游戏(シャンダゲームズ)が開発したファンタジーものです。例によって、早見沙織さんや木村良平さんなど、日本の声優さんが多数起用されています。さらに、花澤香菜さんが主題歌を歌っています。

花澤さんの歌で分かったのですが、読みは「かんなづき」ではなく「しんなづき」です。


(出典:https://www.96u.com/news/201704/306125.html

 

act.moon.sdo.com

次に商標での出願を見ると、

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合計9件出願しています。1つのタイトルで9件は多いほうです。

他国の出願は現時点でありませんでしたが、中国国内でこれだけ出願していればまずは自国で売っていき、将来的には海外展開も見据えているものと思います。日本でのリリースも十分考えられます。

というか日本の声優さんを起用している時点で、「アジア圏での展開を見据えています」と言っているようなものでもありますが(笑)

 

2.3 『少女前线』(日本語タイトル:少女前線、ガールズフロントライン)
(開発=散爆網絡)

こちらは、 銃の擬人化スマホゲームです。例のごとく、雨宮天さん、種田梨沙さん、悠木碧さん、上坂すみれさんなど、日本の声優さんが多数起用されています。


(出典:http://gf.ppgame.com/web/pc/index.html

gf.ppgame.com

中国の出願を見ると、

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合計15件出願されています。十分多いです。更に今調べて気付きました、『少女前线2』が一覧に見えますね。これはもしかして・・・

そして、他国での出願状況。

まず台湾は

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1件ありました。というか台湾では今年に入ってからリリースされているそうですね。

 

次に香港。
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1件ありました。

 

次に日本。

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すでに昨年3月に出願し、同年9月には登録されています。権利者が個人名なのが引っ掛かりますが。

以上から、日本でのリリースもほぼ決まっているであろうことが分かります。

『少女前線』は実はもっと早く日本でリリースされるはずだったのですが、開発会社、運営会社、ディストリビューターとの間のやり取りが原因で頓挫してしまっているようです。

 

2.4 『神代梦华谭』(日本語タイトル:バイブルバレット)
(開発=上海幻电信息科技←bilibiliのことです)

 

こちらはbilibiliが独自に開発したもので、神話を基にしたダークファンタジー系対戦スマホゲームです。雨宮天さん、上坂すみれさん、堀江由衣さん、沢城みゆきさんなど、例のごとく日本の声優さんを多数起用しています。

そして、中国での出願ですが、

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おそらくまだ全部は出願公開されていないのだと思いますが、現時点では2件のみ、他国での出願も現時点ではありません。

中国でも配信され始めて日が経っておらず、客観的根拠も少ないですが、日本でのリリースも視野に入れていると推測しています。

 

2.5 『永远的7日之都』(日本語タイトル:フォーエバーセブンスキャピタル , Forever 7th Capital)

(開発=网易游戏)

 

こちらは网易游戏(NetEase)開発のスマホゲームで、「ある日突然現実世界と異世界が融合し、2つの世界のつなぎ目が裂けたことで生まれたブラックゲートからモンスターが襲来し・・・」といったファンタジー系RPG。崩壊3rdのような3Dです。
声優さんですが、釘宮理恵さん、堀江由衣さん、川澄綾子さん、能登麻美子さん、花澤香菜さん、内田真礼さん等多数起用されています。

個人的に今最も注目しています。

次に、商標の出願動向。

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中国では4件出願。

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台湾では文字とロゴで2件出願。

 香港にも出願しています。

そういうわけで、 网易は『永远的七日之都』を間違いなくアジア展開するでしょう。

興味がある方はYouTubeで「forever 7th capital」と検索してみてください。クオリティ高くてチビります。

 

『料理次元』『螺旋境界线』『装甲联盟』など他にも色々紹介したい作品はありますが、キリがないので今日はここまで。