アニメ・ゲーム分野において、世界でみても日本が非常に進んでいることを否定するつもりは全くありませんが、この先あぐらをかいている余裕もないと思っています。その理由の一つに中国企業の台頭があります。
まず、日本人の中国に対する一般的印象を代弁すると、おおむね「爆発、倒壊」「食の危険」「大気汚染(PM2.5)」「爆買い(越境ECや関税率引き上げにより落ち着きましたが)」「うるさい、マナーが悪い」「パクリ大国」といった感じではないでしょうか。
これらは言い得ている部分も多いですし、実際未成熟な点はまだまだありますが、それだけではありません。私自身、中国について理解し始めてから考えを改めたのですが、いつの間にか想像以上の発展を遂げていて、今も進化し続けています。
「世界の工場」だった中国は、いまでは「世界の市場」でもあります。市場を開放することで外国の優れた技術を導入・吸収するという、1970年代末から中国が行なってきた「市場と技術の交換」〔以市场换技术〕という国家的戦略は、外貨獲得、外資誘致、国内産業の発展、自国企業の国際競争力強化をもたらしました。そして、外国企業を頼りにする動機が以前より少なくなってきた昨今、中国国内において様々な分野で実施されてきた外資優遇政策は次第に廃止される動きにあります。
この動きは、アニメやゲームをはじめとするコンテンツ分野においても同様と言えます。海外アニメの放送量・放送時間の大幅な制限や、外資企業単独による現地でのコンテンツ配信禁止などは、その最たるものです。少し踏み込んで述べると、TVアニメの放送量比率はここ5年の間28(中国):1(海外)程度で推移しています。また、コンテンツは、中国、台湾または香港の企業との合弁会社を経由するか、単に中国企業へ配信権を売ることによって輸出しています。現地法人の外資比率が50%以上だと、中国現地で自らコンテンツビジネスを行うことはかなり厳しいはずです。
そうしたなか、中国企業は、政府の金銭的補助や自国産業保護政策に頼らなければならない企業も多くあるとはいえ、着実に競争力を付けてきており、テンセント〔腾讯〕など一部の企業はコンテンツもお金もめっちゃ持っています。
(中国におけるTVアニメ放映時間、中国统计年鉴より)
そういうわけで、中国コンテンツ企業を紹介していきます。
1.Happy Elements〔乐元素〕
『あんさんぶるスターズ!〔偶像梦幻祭〕』というと伝わりやすいかなと思います。これは、アイドル養成学校の男子高校生と共にトップアイドルを目指すスマホゲームで、主に10代、20代の女性がプレイしているみたいです。
このゲームの開発・運営会社は、日本ではHappy Elementsという商号で知られていますが、実は「乐元素」という中国企業の日本法人、完全子会社です。乐元素はもともと2009年に北京のマンションの一室から始まり、どんどん規模を拡大させアジアに広く展開するようになりました。
日本での高い創作力と開発力を利用して、その成果を吸収していると捉えられます。『あんスタ』は中国国内はもちろん、台湾でも展開されています。
そのほかにも、『メルクストーリア - 癒術士と鈴のしらべ -』や『マジョカ†マジョルナ』『あんさんぶるガールズ!』といったゲームがあります。また、つい先日まで日中で放映されていた『アイドルメモリーズ〔星梦手记〕』というアニメ(製作Happy Elements、制作セブン・アークス・ピクチャーズ)も。
コンテンツのOEM(ODM)制作でもあり、中国がすべてを作ったわけではないですが、グループ全体、日中両国、アジアで最大限活用できる優れたモデルだと思います。中国は外資企業のコンテンツ制限が強いですが、Happy Elementsは親会社が中国なのでその辺は多分問題なくクリアしていて、日本ではコンテンツ分野での外資規制は特にないですし。
2.絵夢
アニメ業界内ではすでに広く知られ始めているのではないでしょうか。
上海绘界文化传播有限公司(绘梦动画)という中国企業の日本法人で、中国原作のアニメ制作・出資、日本でのTV放映・SVOD配信、他社作品の製作出資、製作委員会組成を担当しています。会社は吉祥寺駅からわりと近く、一つのビル?ホール?すべてを借りて入っています。
現在、日中韓三か国で展開しており、次第に影響力を強めている印象があります。
『霊剣山』や『狐妖小红娘』は中国で大人気です。
3.miHoYo〔上海米哈游网络科技股份有限公司〕
『崩壊学園』という美少女ゾンビゲームを出している会社です。秋葉原に日本法人があります。さっきmiHoYoのHPを見たら12/22付けで「日本国内ユーザー300万人突破」とありました、もちろん中国国内でも人気です。
最初は、上海交通大学の大学院生3人で立ち上げた同人ゲームサークルだったようで、日本のコンテンツとともに育った中国人が、今度は自分たちの手でコンテンツを作った、という感じですね。
4.重庆视美精典影视动画有限责任公司(英語名:G.CMAY Animation & Film)
中国アニメに抱いていた印象を大きく変えたのがこの会社かもしれません。ここは日本法人があるわけではなく日本での知名度も皆無ですが、アニメの質に驚いたので紹介します。
視美精典は中国・重慶にあるアニメ制作会社(2007年設立)で、いままでに20作のアニメを制作しており、制作分数は20000分以上に及んでいます。視美精典は、アニメ制作会社としてのブランドを最も早く築けそうな気がします。
作品例として三つ挙げます。
(1)『愛神チョコレーティング〔爱神巧克力进行时〕』
日本のラノベアニメっぽさがあります。普通にすごい。
(公式)
(2)『Balala The Faries Finding Melody〔巴啦啦小魔仙之梦幻旋律〕』
巴啦啦小魔仙は、中国の子供向け魔法少女変身ものアニメ、実写特撮シリーズです。ぱっと見プリキュア。アニメは今4シリーズまであります。
(公式)
(3)『女媧成長日記〔女娲成长日记〕』
どこか少女マンガっぽさがあります。OP中の髪の毛の動きとか凄い。
(公式)
このほかにも、巨大なコンテンツホルダー(奥飞など)、アニメ・マンガのメディアプラットフォーム企業(合一集团、爱奇艺、嗶哩嗶哩など)がどんどん台頭してきています。
今日はここまで。