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アニメ、マンガ、ゲーム分野で気になった国内外の話題を気まぐれで取り上げます。本ブログは公知情報、または筆者が公知情報を基に独自に開発した情報を内容としています。

中国企業による日本IPのゲーム化は単なるライセンスアウトに留まるのか

今日はスマホゲームの話題。
以前から、インターネット出版サービス管理規定など中国特有の非関税障壁を超えるため、日中のゲーム会社同士でアライアンスを組み、日本で配信しているゲームを中国のディストリビューター(パブリッシャー)を経由して輸出することは盛んに行われています。

ところが、ここ最近になって中国の大手ゲーム会社が日本のコンテンツホルダーから許諾を受けて新規でゲームを開発・運営する事例をよく目にするようになりました。

(正確にいうと、ワンピースや聖闘士星矢等中国向けに作ってる例も前からありますが、ここ最近顕著になってきたという意味で)


そういうわけで、以下いくつか紹介していきます。

 

1.紹介

 

(1)『初音ミク-夢幻の歌姫-(初音未来:梦幻歌姬)』 ジャンル:リズムゲーム PF:スマホ

ライセンスエージェント:SCLA(上海新创华文化发展有限公司)

パブリッシャー:テンセント(腾讯)

ディベロッパー:OURPALM(掌趣科技)

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(出典:《初音未来:梦幻歌姬》手游-官方网站-腾讯游戏-极光计划

まずは初音ミク。クリプトン・フューチャー・メディア(株)から許諾を受けて音ゲーを作っています。同社が監修もしています。
まだ正式には配信されていないのですが、近いうちに配信が始まる模様です。

余談ですが、SCLAは2014年秋から中国における初音ミクの総代理をしています。また、ゲームだけでなく、『ラブライブ!サンシャイン』などアニメの代理を行ったりもしています。
クローズドβテスト時のプレイ動画はこちら。

 

(2)『叛逆性ミリオンアーサー(叛逆性百万亚瑟王)』 ジャンル:MMOアクションRPG(3D) PF:スマホ

パブリッシャー:ネットイース(网易)

ディベロッパー:ネットイース(网易)

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(出典:ma3.163.com

スクエニのミリアサシリーズ。対戦型カードRPGから一転して3DMMORPGになっています。こちらもまだ正式には配信されていません。

スクエニの担当は開発というより、世界観やストーリー設計、監修ですね。
ファミ通にインタビュー記事があるので詳細は以下URL先で。

つい先日、水樹奈々さんが歌っているOPムービーが公開されました。

 ▼OPムービー

▼プレイ動画

 

(3)『とある魔術の禁書目録(魔法禁书目录)』 ジャンル:3DアクションRPG PF:スマホ 

パブリッシャー:ネットイース(网易)

ディベロッパー:ネットイース(网易)

権利的にはアニメ委員会⇒广州天闻角川(代理)⇒ネットイースという流れのようです。そして、中身については日本の角川が監修しています。
こちらはiOS、androidともに既に正式配信が始まっています。

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(出典:http://bilibili.163.com/index.html

 ▼プレイ動画(参考)

 

紹介は大体こんな感じで。

 

2.中国企業による日本IPのゲーム化は単なるライセンスアウトに留まるのか

 

ここで表題に戻ります。1.で紹介した三つのゲームはいずれも日本での配信は未定です。配信されるかもしれませんし、中国だけで終わってしまうかもしれません。

どういうビジネスモデルかというと、次の3通りが考えられるのではないでしょうか。

 

(1)純粋なライセンスアウト

中国のゲーム会社にゲームを作るための許諾を与え、最低保証金+ランニングロイヤリティといった形で許諾料や売上の一部を得るものです。素材も一から作っているのか、PSPやVitaの素材を貸したりしているのかは不明ですが。

ライセンスアウトのみの場合、基本的には日本国内ユーザーはプレイすることができせまん。そもそも想定されているユーザーは中国国内の人たちなので。

日本IPが中国でハイクオリティなスマホゲーム化されて国内ユーザーが難民になるというのも少し不思議な感じがしますが。

中国語が理解できる、中国の電話番号を持っている、実名認証、といった条件をクリア出来れば遊ぶことには遊べます。

 

(2)ライセンスアウト先による日本を含むグローバル配信

 

モデルケースを挙げると、米国企業MZ(厳密にはEpic Action LLC)が世界配信している『ファイナルファンタジー15:新たなる王国』ですね。

 

(3)オフショア開発&ライセンスアウト&逆ライセンスイン

こ中国のゲーム会社に対して開発委託と同時に許諾を与え、中国の開発リソースを活用して新規にゲームを作ってもらい、まずは中国で配信。その後、逆輸入して日本に展開、といった感じです。

1.紹介で例に挙げた3つのアプリはいずれも有名なIP且つ高いクオリティ水準にあり、もし日本でも展開されたらきっと人気が出ると思われます。

日本配信に言及はありませんが、可能性としては(3)も考えられなくはないかと。

 

ただ、オフショア開発というのは本来人件費の安い海外に委託することで開発コストを抑えるのが目的です。その点、1.で開発やパブリッシュを担っているのは中国国内でもトップを走っている企業で、開発コストは日本とそんなに変わらないんじゃないかと思います。本来的な意味でのオフショア開発というより、高い技術力を期待してのことかもしれません。

 

まだ見えてこない部分が多いので、今後もしばらく動向を追っていきたいと思います。

 

ツイッター @dongmanshangye